突出する米企業利益、マネーが米国回帰へ勢いづく...
27日の米株式市場で、主要な株価指数S&P500種株価指数が約4カ月ぶりに史上最高値を更新した。
トランプ関税は、もはや『株高への重しとはならず』…
相互関税の発表直後に起きた「米国資産売り」から一変し、マネー回帰を促したのは『米主要企業の継続的な利益成長』だ。
関税影響や米経済の減速という逆風下でも、人工知能(AI)関連などがけん引する業績拡大が日欧を圧倒する。
機関投資家の米テック株買い越し、「過去最大級」に…
S&P500は27日に前日比0.5%高の6173で引け、2月19日の従来の最高値(6144)を上回った。4月8日の安値を起点とすると上昇率は2割以上に及ぶ。テクノロジー銘柄の比率が高いナスダック総合株価指数も約半年ぶりに最高値を更新した。米連邦準備理事会(FRB)の利下げペース加速観測によるリスクオンが記録更新を後押しした。ダウ工業株30種平均は続伸し、前日比432ドル43セント(0.99%)高の4万3819ドル27セントで終えた。
中東和平期待から原油相場は水準を切り下げ、予想インフレ率の低下を促す。労働市場の減速感やトランプ米大統領による度重なる利下げ要求で、金利先物市場ではすでに「年内3回利下げ」シナリオが最有力となっている。
相場V字回復の底流には、グローバル投資家の米株に対する評価見直しもある。米銀大手バンク・オブ・アメリカ(BofA)が相互関税の発表直後に実施した4月「グローバルファンドマネジャー調査」では「米国株の持ち高を減らす」との回答数が過去最多を記録した。
流れは足元で逆転している。BofAの顧客売買動向によると6月16〜20日に機関投資家は米株を前の週に続いて買い越しし、特に『米テクノロジー株の週間買越額は比較できる2008年以来で最高を記録』した。
「AIへの熱狂が相場回復を主導している。熱気はしばらく冷めそうにない」。米LRTキャピタル・マネジメント創業者ウーカシュ・トミチ氏は話す。4月8日〜6月26日の時価総額増加幅でみると、約1兆4000億ドル(約200兆円)増えた半導体大手エヌビディアや同約1兆ドル増のIT(情報技術)大手マイクロソフトが主要企業のなかで突出する。エヌビディア株は27日まで3日連続で最高値を更新した。米国9%増益 欧州5%増、日本は2%増止まり
関税負担増があっても、構造的なAI需要拡大が見込まれる半導体関連が米企業全体の増益をけん引する。QUICK・ファクトセットのアナリスト業績予想集計によると、S&P500構成銘柄は2025年に前期比8.9%の最終増益見込みだ。欧州ストックス600(4.6%増益)、日本のTOPIX500(2.4%増益)と比べても利益拡大ペースは突出する。
ソフトウエア大手や動画配信などエンターテインメント企業の利益増も目立つ。サービスは関税の直接影響を受け難い。ドル安基調も米企業の海外利益を押し上げアナリストによる業績予想引き上げも相次ぐ。S&P500構成銘柄では5月、6月ともに上方修正の銘柄数が下方修正の数を上回った。日欧では下方修正がなお優勢だ。年初から先行していた欧州株を米国株が猛追する原動力となっている。
もっとも、急ピッチな相場回復が、業績拡大期待や利下げ期待といった「いいとこ取り」に支えられている面は否定できない。割高感も再び滲んで来た。予想PER(株価収益率、12カ月先ベース)は22倍台と、過去20年平均に比べて3割以上高い水準まで切り上げた。
目先の最大のリスクは、米国と貿易相手国との協議が停滞する展開だ。トランプ氏が米東部時間27日午後にSNSでカナダとの貿易協議を直ちに打ち切ると表明すると、S&P500やナスダック指数が前日比マイナス圏に沈む場面もあった。7月9日には相互関税の上乗せ部分の一時停止措置が終了する。