AIデータセンターに数兆ドルを投資しても、利益を出せるわけがない

 IBMのCEOアービンド・クリシュナ(Arvind Krishna)氏は、自身の見解を次のように述べたようです。偶然なのか、賛同者にAIによるソフトウエア乗っ取りで株価が急落した企業(IBM、セールスフォース等)のトップが連なっています。

AIデータセンターに数兆ドルを投資しても、利益を出せるわけがない

端緒は、次の四半期決算で明らかになる!

 この記事は「新着」のように見えますが、2025年12月22日発の記事です。以下に、全文を引用しますが、6カ月前の記事を「恰も、昨日・今日の記事の如くに扱われると、少々気味が悪い」です。
  • IBMのCEOは、データセンターの収支を“どんぶり勘定”レベルでざっと計算しただけでも、現在のコスト水準では「利益を出せるわけがない」と述べた。
  • 「設備投資が8兆ドル(約1244兆円)に達すると、利息を払うだけで約8000億ドル(約124兆4000億円)の利益が必要になる」と、アービンド・クリシュナ氏はポッドキャストで語った。
  • クリシュナ氏は、現在のAI技術がAGI(汎用人工知能)につながる可能性について懐疑的で、その確率はわずか0〜1%と見積もっている。
 AGI実現に向けた競争の中で、AI企業はデータセンターに数十億ドル規模の巨額な投資を行っている。そうした賭けの経済的合理性について、IBMのCEOアービンド・クリシュナ(Arvind Krishna)氏が自身の見解を示した。

1GW規模のデータセンターに12兆円必要

 データセンターへの支出は増加している。メタ(Meta)の最近の決算説明会では、「キャパシティ」やAIの「インフラストラクチャー」といった言葉が繰り返し使われた。グーグル(Google)は将来的には宇宙にデータセンターを建設したいと発表したばかりだ。

要は、投下資金を回収可能なのか?だ

 問題は、データセンターから生み出される収益が、これほど巨額な設備投資を正当化できるかどうかだ。
 クリシュナ氏はポッドキャスト「Decoder」で、データセンターへの設備投資について、投資に見合うリターンを得られる見込みは「ほぼない」と結論づけた。

 彼は、「将来のことは推測に過ぎないため、あくまで現在のコストに基づいた概算だが」と前置きしたうえで、1GW規模のデータセンターをフル稼働させる設備を整えるには約800億ドル(約12兆4400億円、1ドル=155.5円)かかると述べた。
 「これが現時点での数字だ。つまり、20〜30GWのデータセンターを稼働させようとしている企業は、その1社だけで1兆5000億ドル(約233兆2500億円)の設備投資を迫られることになる」とクリシュナ氏は語った。

 クリシュナ氏はまた、もう一つの要因として、データセンターのサーバーに搭載されるAI半導体(チップ)の減価償却期間が短い——つまり価値が急速に目減りする点を挙げた。
 「AIチップの寿命は5年で、5年後にはすべて廃棄して入れ替える必要があるからだ」と彼は述べた。
 著名投資家のマイケル・バーリ(Michael Burry)氏は最近、価値の目減りに対する懸念からエヌビディア(Nvidia)を批判しており、それがAI関連株の下落につながっている。

アルトマン氏は「毎年100GW増やすべき」と言うが…

 「AGIの実現を目指すこの分野において、これまで発表された世界全体のコミットメント(投資規模)を見ると、100GW程度の規模に達しているようだ」とクリシュナ氏は述べた。

 1GWあたり800億ドル(約12兆4400億円)というクリシュナ氏の試算に基づけば、100GWの投資総額は約8兆ドル(約1244兆円)に上る。
 「そこからリターンを得る道はないというのが、私の見解だ。なぜなら、設備投資が8兆ドル(約1244兆円)に達すると、利息を支払うだけで約8000億ドル(約124兆4000億円)の利益が必要になるからだ」と彼は述べた。

 そこまでのGW規模の設備投資をするためには、AI企業が莫大な支出を行う必要があり、外部からの支援を求める動きも強まっている。

 OpenAI(オープンAI)CEOのサム・アルトマン(Sam Altman)氏は、ホワイトハウスの科学技術政策局(OSTP)に送った10月の書簡の中で、アメリカは100GWのエネルギー供給能力を毎年増やすべきだと提言した。

端緒は、早ければ次の四半期決算で明らかに...

早期のAGI実現に相次ぐ「懐疑的」見方

 Decoderのホスト、ニレイ・パテル(Nilay Patel)氏は、OpenAIが設備投資に見合うリターンを生み出せるとアルトマン氏は信じていると指摘した。OpenAIはさまざまな取引を通じ、すでに約1兆4000億ドル(約217兆7000億円)を投じることを約束している。この点について、クリシュナ氏は自分はアルトマン氏とは意見が異なると述べた。

 「それは一つの信念に過ぎない」とクリシュナ氏は語った。「そうした考えを追い求める人がいるということは理解できるが、それと彼らに同意することは別の話だ」。
 クリシュナ氏は、現在の技術の延長でAGIに到達できるという考えには懐疑的だと語った。

 AGIは一般的に、AIが人間より高度で複雑な作業をこなせるようになる段階を指し、まだ実現していない技術的ブレークスルーだと考えられている。彼は、さらに大きな技術的ブレークスルーなしにAGIにたどり着ける確率は0〜1%と見ている。
 AGI実現を急ぐ動きに懐疑的な見方を示す著名なリーダーは、ほかにも複数いる。

 セールスフォース(Salesforce)のマーク・ベニオフ(Marc Benioff)CEOは、AGIの実現加速の動きを「極めて疑わしい」と述べ、「催眠術」に例えた。グーグル・ブレイン(Google Brain)の創設者アンドリュー・ン(Andrew Ng)氏は、AGIは「過大評価されている」と述べ、ミストラル(Mistral)のアーサー・メンシュ(Arthur Mensch)CEOは、AGIは「マーケティング戦略に過ぎない」と述べた。

「可能性はあるかも」程度の実現性

 たとえAGIを目指しているとしても、AIの計算能力を支えるインフラの規模を拡大するだけでは十分ではない可能性がある。
 OpenAIの共同創設者イリヤ・サツケヴァー(Ilya Sutskever)氏は11月、スケーリングの時代は終わったと述べ、LLM(大規模言語モデル)を100倍にスケールさせても完全に状況を一変させるほどの変革をもたらすことはできないとの見方を示した。「結局、大規模な計算環境を使うようになっただけで、研究の時代に戻ったということだ」と彼は語った。

 一方、1990年にIBMでキャリアをスタートし、2020年にCEO、2021年に会長に就任したクリシュナ氏は、現在のAIツール群については高く評価した。
 「企業の生産性は数兆ドル規模で向上することになると思う。そこは絶対に明確にしておきたい」と彼は述べた。
 ただし、AGIの実現には「現在のLLMの路線を超える、より多くの技術が必要になる」とクリシュナ氏は指摘した。将来の選択肢の一つとして、彼は、ハードナレッジ(確立された知識)とLLMを融合させるアプローチを提案した。
 それでAGIが実現する可能性はどの程度あるのか?「融合させたとしても、私の答えは『可能性はあるかもしれない』という程度だ」と彼は語った。

編集後記

 今年に入り。名だたる企業が借入金を増やしてでも、設備投資に前かがみです。ひれは、受注残が膨れ上がっているからという事です。その端緒は、次の四半期決算報告で現れることでしょう。このIBMのCEOが勝つのか、GoogleのCEOが勝利を引き寄せるのか、これは見ものです。

宇宙空間のデータセンター

 グーグルCEOは、『宇宙空間データセンター』に関して、次のような発言を行っています。
 2025年12月1日午後7時33分(日本時間)
 人工知能をめぐる壮大な宇宙開発競争が始まった。Googleは、「いつの日か宇宙空間で機械学習を大規模に展開する」ことを目指し、「プロジェクト・サンキャッチャー」と呼ばれる長期的な研究イニシアチブに密かに取り組んできた。

 GoogleのCEOであるサンダー・ピチャイ氏は、Fox News Sundayのシャノン・ブリーム氏に対し、 Googleの目標は2027年にも太陽光発電を利用したデータセンターを宇宙に 設置し始めることだと語った。

 「2027年に最初のステップを踏み出します」と彼は述べた。「ごく小さなラックに搭載されたマシンを衛星に送り込み、テストを行い、そこから徐々に規模を拡大していく予定です。」
 ピチャイ氏は、10年後には地球外データセンターを建設することが当たり前になるだろうと述べた。

 「Googleでは、常に大胆な挑戦をすることを誇りとしています」と彼は述べた。「私たちの目標の一つは、太陽からのエネルギーをより効率的に活用するために、いつか宇宙にデータセンターを設置することです。太陽からのエネルギーは、現在地球全体で生産されているエネルギーの100兆倍にもなります。」

 Googleのこの大胆な方向転換は、データセンターの電力需要に対する世界的な監視の目が強まる中で行われた。
「2027年には、宇宙のどこかにTPUを搭載できることを願っています」と、彼は先週のポッドキャスト番組「Google AI: Release Notes」で、同社独自のAIチップについて言及しながら語った。