グーグル、静かに「AI競争」から退いた?

 興味を引く記事が掲載されていましたので、引用して紹介します。

 グーグルはもはや、オープンAIやアンソロピックと同じゴールを競っていない。ライバル各社が目指すのは自ら改善するAI。一方、グーグルは実世界を理解するAIを志向する。
 この分岐は見逃しやすい。グーグルは依然としてAIモデルを提供し、利益も得ている。しかし、最新リリースは第三者評価で10位となった。
  • グーグルは、自らコードを書くAIではなく、現実世界を理解するAIの開発を進めている。
  • Gemini 4はその進化の試金石となる。これは、2011年以来グーグルのAIを主導してきた研究者が関与しない初めてのフラッグシップモデルとなる。
  • Anthropic共同創業者ジャック・クラーク氏は、ディープマインドを「ビッグ3の中で最も慎重」と評した。
  • アルファベットは前四半期にAI関連の支出が449億ドルに達し、資金を消費した。
グーグル、静かに「AI競争」から退いた?

トークンの減少が顕著...

 グーグルは7月21日に「Gemini 3.6 Flash」を発表した。強調したのは速度とコストであり、性能そのものではない。
 同モデルは従来版より17%トークン生成数が減ったと、グーグルの公式ブログで説明した。トークンとはAIの文章生成で用いられる最小単位であり、トークンが少ないほどに回答コストも低減する。
 一方で、性能は別問題であり、公開されているArtificial Analysis indexの評価では、本モデルは10位に甘んじていて、他の主要ラボはいずれもこれを上回っている。
 グーグルは現状に甘んじていない。Gemini 4向け史上最大規模のトレーニングを始動した。より大型の「Gemini 3.5 Pro」モデルもパートナー企業にて引き続きテスト中。

ディープマインドに注力

 ワールドモデルとは、物理法則に従うモノのふるまいを学習するAIを指す。重力や運動、原因と結果といった概念を理解する。次の「単語」ではなく、「部屋」で何が起きるかを予測する仕組み。

 ディープマインドの公式サイトでも、この方針を明示している。「Genie 3」や「Gemini Robotics」といったプロジェクトを、機械制御を担うワールドモデルおよびエンボディードAI(実体を持つAI)のカテゴリーに分類している。

 5月に同研究所はプロジェクトGenieをストリートビューにも拡張。また、仮想3次元空間内で学習するエージェント「SIMA 2」をリリースした。
 一方、オープンAIやアンソロピックは全く異なる目標を掲げる。彼らが目指すのは「RSI(Recursive Self-Improvement:再帰的自己改善)」である。
 要するに、より賢いAIを自ら開発できるAI。それがさらに次世代を生み出す仕組みを作ろうとしている。
 作家のアルベルト・ロメロ氏は28日、グーグルはこの競争から意図的に離脱したと論じた。

ディープマインドは異端

 最も鋭い分析は、数か月前にライバル企業から出た。アンソロピック共同創業者のジャック・クラーク氏は、5月4日にAIの未来を論じたエッセイを発表した。
同氏は、2028年末までにAIが自律的に研究開発を遂行する確率を60%と見積もるとともに、2027年時点でその確率を30%と予測した。

クラーク氏は続けて、どの研究所がその目標を追っているかを問うた。ディープマインドは「ビッグ3の中で最も慎重に見える」と記述した。慎重とは用心深い姿勢を意味する。

 その根拠はディープマインド自身にある。共同創業者のシェーン・レッグ氏が共著した2025年のAI安全論文を挙げた。
 アンソロピックの取り組みはより大胆である。今年5月時点で、クラウド(Claude)が納品するコードの8割超を自ら生成したとRSI研究で報告した。2025年2月以前、この割合はほぼゼロだった。

 同社はより高度なAIを自律的に構築するAIの記録も残す。速度試験でも、モデルは昨年比2.9倍に対し、今年4月時点で52倍の性能向上を実現した。熟練エンジニアでも、同一タスクで4倍の成果を出すには4~8時間を要する。
グーグルは本当にAI競争から撤退したのか?

グーグルは本当にAI競争から撤退したのか?

この議論の前提となる説に反する事実が2つある。

①Googleは、AI研究スキルを測定する最も精度の高いテストを主導している。
 MLE-Benchはモデルに対し、自律的に機械学習システムを構築させるものだ。ジェミニ3モデルは2月に64.4%を記録した。当時は最良の成績だった。Googleは7月に3.6 Flashを63.9%とした。分野から撤退した研究機関がスコアボードの上位を維持することはほとんどない。

② Googleは市場から遠く離れているわけではない。
 ピチャイCEOは投資家に対し、ジェミニアプリの月間ユーザー数が9億5000万人に上ると述べた。Googleは今月、NVIDIAのオープンAIアライアンスへの参加を見送った。オープンAIやAnthropicも同様だった。

Googleは待つ余裕があるのか?

 待つことの合理性は単純だ。検索広告が他の事業を支えているため、DeepMindは時間をかけられる。ただしアルファベットの証券報告書では、その余裕が縮小しつつあることが示された。

売上高と支出

 6月四半期の売上高は1198億ドルに達して24%増加した。7月22日公表の決算資料によると、検索事業だけで633億ドルを稼いでいる。
 一方で、支出も膨らんだ。アルファベットは3か月でデータセンターや設備に449億ドルを投じた。前年比でほぼ2倍だ。
 その結果、フリーキャッシュフローは58億6000万ドルの赤字となった。フリーキャッシュフローは設備投資など支払い後に残る資金を指す。

債務が増加...

 この数値は3月時点で101億ドルの黒字、12月には246億ドルの黒字だった。アルファベットはこの差額を埋めるため、6月に新たに496億ドルの株式を発行し、さらに203億ドルを借り入れた。長期債務は6か月で465億ドルから982億ドルへと倍増した。

 共有AI研究関連の勘定科目では、損失が57億9000万ドルへ拡大。前年の33億7000万ドルから増加した。今や「忍耐」にも対価が生じている。

今後30日間で注目すべきポイント

  1. Gemini 3.5 Proがリリースされ、その評価が判明するか
  2. DeepMindがGemini 4に関連する世界モデルの研究成果を示すか
  3. 9月にアルファベットのキャッシュフローが再び黒字化するか
  4. ハサビスCEOが自己改善に関する問いに直接答えるか
  5. Gemini 4こそが真の試金石だ。世界モデルがコーディングエージェントの壁を突破すれば、これまでの慎重な歩みが「慎重」ではなく「賢明」だと評価される。
  6. 次の決算で、アルファベットがどれほどの期間、投資を続けられるのかが問われる。
Googleは待つ余裕があるのか?

 編集後記

 オープンAIやアンソロピックとの棲み分けは必要でしょう。彼らはAIの専業者です。グーグルは、AIを1セクションとして扱う筈ですし、この記事を見ると確実に第2歩ほどを踏み出しています。但し、派手な箇所が少なくなる反面教師として、資金確保と資金創出力が問われる段階へといずれ到達する筈です。