米国債の保有残高で、英国が首位に躍り出る
米財務省が公表した8月末の主要外国保有者統計(TIC)によれば、日本の米国債保有残高が4カ月連続で減少し、1兆683億ドルとなった。その一方、英国の保有残高が1兆95億ドルと過去最高を更新し、日本に肉薄した。8月末は日本がかろうじて世界最大の地位を維持したが、未公表の直近ではその座を英国に既に明け渡した可能性が高い。(日経新聞)
英国が日本を抜き去った
米財務省の主要外国保有者統計(TIC)において、英国の米国債保有残高が日本を抜き去り世界首位の座を窺う(実質的に首位へ躍り出る)要因には、主に次の3点が考えられます。- 「ヘッジファンドなど国際マネーのハブ機能」
- 「中国の脱・米国債シフト」
- 「日本の為替介入や金利上昇に伴う保有減」
構造的な仕組みと理由
実際には英国政府が国費で米国債を爆買いしているわけではありません。その背景にある構造的な仕組みと理由は以下の通りです。ロンドンを拠点とする「ヘッジファンド」の急増
最大の理由は、世界的な地政学リスクの高まりを受け、各国の政府(中央銀行)に代わって海外のヘッジファンドが米国債の最大の買い手になっていることです。- 金融ハブとしての機能 : ロンドンは世界最大の金融センターの一つであり、多くのグローバルなヘッジファンドや機関投資家が拠点を置いています。
- カストディアン(資産管理)経由のカウント : 米財務省の国別統計は「実際に購入した投資家がどの国にいるか」ではなく、「どの国の金融機関(口座)を通じて決済・管理されたか」で集計されます。そのため、世界中の富裕層やファンドがロンドンの金融機関を通じて購入した米国債がすべて「英国の保有分」としてカウントされ、残高が急膨張しています。
中国による「米債売り・金買い」の加速
かつて日本と首位を争っていた中国が、米中間選挙や地政学的緊張を背景に、安全保障の観点から外貨準備の「脱・ドル化(米国債から金などへのシフト)」を急速に進めています。- 中国の保有高がピーク時から大きく減少 : 相対的に投資資金が集まる英国が順位を押し上げる結果となった。
日本の保有減少(防衛的な米債売りと国内金利上昇)
これまで長期にわたり首位を維持してきた日本ですが、保有残高の減少傾向が続いています。- 為替介入の原資: 円安を抑えるためのドル売り・円買い介入の原資として、日本政府が保有する米国債が取り崩されてきました。
- 国内への資金回帰: 日本国内の10年債利回りが上昇してきたことで、わざわざ為替リスクを冒して米国債に投資しなくても、東京(国内市場)に資金を留め置く動きが日本の機関投資家の間で強まっています。
結論
このように、「政府による購入」ではなく、「世界中の投資マネーが英国ロンドンを経由して米国債に流れ込んでいる」というのが、英国の保有残高急増の正体です。編集後記
ヘッジファンドや中東産油国がロンドン経由で米国債を保有することは、正体隠しに利用されているのでしょう。上手な構図です...。
米国にとっては、ヘッジファンドに拠る保有が増加し過ぎると、売買が急増して金利の上げ下げが気になるところです。
今後、中国やロシアが再び米国債市場へ帰って来ることは無いので、日本をこの市場へ引き留めて置かないと(日本の金利上昇を止める、円安の流れを遮断する...)、米国は気が気でないでしょう。無事を祈って...。
*個人的には『米のゼロクーポン債』に興味があります。しかし、私自身が既に高齢で、『債券をあの世に持って行けない』から諦めています...。
