崩れぬ円安構造、政府の「隠し玉」に在庫なく しぼむ日銀利上げ期待

円安を牽制する口先介入

 ついにトランプ米大統領も円安けん制の口先介入に加わったようだ。この1年、あの手この手で円安阻止に精力を傾けた日本政府だが、円安構造はなかなか崩れず、打つ手も次第に限られてきた。
 市場の注目は「円高要因になる日銀の追加利上げ」に向かうが、こちらもあまり期待できそうにない。日本の場合、経済成長との絡みが強過ぎるからである...。

2026年初頭から...

 2026年1月以降、日本政府は米国の協力も得て、経済成長の妨げになる「これ以上の円安を阻止」すべく種々の抑止策を繰り広げてきた。2026年の円相場チャートを見ると、状況はより鮮明になる。

レートチェックから...

 1月下旬の米通貨当局による円買い介入の前段階とされるレートチェック。ゴールデンウイーク中には政府が大規模な円買い介入を実施した。それでもやまぬ円安圧力に、7月末には日米両政府が円買い協調介入を断行。そして9月にはベッセント米財務長官が円安をけん制する口先介入の姿勢も示した。

もはや「隠す玉もない」...

 日本政府が様々な介入手法を繰り出すたびに、市場は急速な円買い戻しを迫られ、円高が加速した。だが賞味期限はわずかで、もはや市場を驚かせるような「隠し玉」はほとんど残っていない。結局、円相場はジグザグな軌道を描き、今なお1ドル=160円をうかがう水準に張り付いている。

トランプ氏も参戦するが...

 22日の日米首脳会談ではトランプ氏が高市早苗首相に円安への懸念を述べたと伝わったが、市場からは持続的な円買い材料と受け止められていない。いったい何が円高への反転を妨げているのか? 最大の要因は需給面の円安構造だ。

日本の貿易赤字が増えている...

 財務省が16日に発表した8月の貿易統計。長引くイラン情勢を背景に輸入額が膨らみ、貿易赤字はついに1兆円の大台に乗った。政府の円安けん制に過敏に反応するのは、ヘッジファンドなどの投資マネー。実需の円売りは定期的に市場に持ち込まれ、介入の直接的な影響を受けづらい。

投資(投機)マネーは往復ビンタ

 一方、投資マネーは円買い介入に即座に反応して円買いに追随するが、片道切符ではなく、為替差益を確定させるために短期間で円売りに転じる。

為替差益の確定事例...

 みずほ銀行が米商品先物取引委員会(CFTC)のデータから算出したヘッジファンドなどによる対ドルでの円の売買動向を見ると、ベッセント氏の口先介入などを受け、15日時点で円の買い持ち高が100億ドル近くに達したが、翌週の22日には50億ドル台に縮んでおり、短期間で為替差益の確定に動いたことが類推できる。安定的に市場に出てくる実需の円売りが追い風になり、投資マネーも円売りに追随しやすい。
 ふくおかフィナンシャルグループの佐々木融氏は「原油高だけでなく、原油に関連する素材価格なども上昇しており、日本の貿易赤字はさらに拡大する可能性が高く、実需の円売り圧力はさらに強まる」とみる。

米国との金利差縮小が必要だが...

 実需の円売りが強まるなかで、市場が注目するのは実需と並ぶ相場変動要因である金利差の動向だ。円高要因になる日米間の金利差縮小には、日銀の追加利上げが大きく影響する。
 市場の一部では日銀が10月の金融政策決定会合で連続利上げに踏み切るとの臆測もささやかれるが、植田和男総裁の記者会見をみるかぎり可能性は低い。

米国との金利差縮小が必要だが...

日銀の連続利上げは期待薄...

 植田総裁は会見で、急激な利上げを迫られた2022〜23年の欧米の金融政策を例に、大幅利上げや連続利上げに踏み切るのは「物価が目標を超えてものすごく上がっていくリスクが高い」といった場合に限られると明言。言葉通りに受け止めれば、すぐに実施する可能性は低い。

160円/ドルの攻防が続く見込み...

 日本政府は歴史的な円安が現実味を帯びる160円の節目を抜ける円安を回避したい意向とみられる。だが実需の動向を見るかぎり、まだしばらく160円を巡る政府と市場の攻防は終わりそうにない。

編集後記

 『円高トラウマ』...日本民主党時代の超円高が脳裏に焼き込まれ、大きなトラウマとなってい模様です。明治初期、『1ドル = 1円 = 1gのゴールド価格』でスタートした日本帝国ですが、数度の大戦を経て、今や大きく変貌を遂げています。