DeepSeekアプリは、結果的に米国が「生みの親」で誕生した?...

 「DeepSeekアプリ」は発表から数日で、アップルのアプリ市場「アップルストア」で最もダウンロードされたアプリとなりました。この結果、米国のAIにおける優位性を巡る懸念が急激に浮上して、米国市場のハイテク株は一時約1兆ドルも下落したのです。

 しかし、「DeepSeekショック」が米国市場を襲ったのもホンの束の間、翌日には下落率の50%以上をリカバーするなど、既に「過去の記憶」として米国から追いやられています。米国のライバルが出現した時、例の如く、よくあるパターンが見られるので列記します。

(1)DeepSeekが「OpenAIからデータを不正入手」した疑いが浮上、マイクロソフトが調査中である...。

 Bloombergの報道によれば、Microsoftのセキュリティ研究者はDeepSeekと関連があるとみられるグループが、OpenAIのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を通じて大量のデータを不正に取得しているのを、昨年秋に確認したとのこと。
 不正に取得されたとするデータは、OpenAIのAIモデルの出力結果であり、DeepSeekはOpenAIの出力を利用して、自社のAIモデル「R1」を開発した可能性があるというものです。 
 通常、DeepSeekレベルの性能を持つAIを開発するには、『数千億円の開発費、数万台の高性能GPU、数年の研究期間が必要(*この根拠は不明...)ですが、教師モデル(OpenAI)のデータを使って、この「蒸留」を行なえば、一から作るよりもはるかに低コスト、かつ短期間で高効率のAIを開発可能とされています。

 今回の報道が本当なら、DeepSeekが取得したOpenAIのデータは「蒸留」の元データとして使用された可能性が高いでしょう。

 トランプ米政権の人工知能(AI)・暗号資産責任者デービッド・サックス氏は、DeepSeekがOpenAIから蒸留した証拠がある、とコメント 

 OpenAIはサックス氏に対応した発表文で直接DeepSeekには触れず「中国を拠点とする企業およびその他の企業が、米国のAIをリードしている企業のモデルを模倣しようとしていることを知っている」とし、

AIのトップ企業として、知的財産を守るための対策に取り組んでいる。米政府と緊密に協力することが、極めて重要だと考えている。

などと述べました。

DeepSeekがオープンAIデータ不正入手か、マイクロソフト調査中

(2)DeepSeekのAI開発成功で、半導体輸出規制の有効性に疑念が生じる...

 中国の最先端AI開発を阻止する戦略を巡り米政界で議論を巻き起こしている。米政策当局者は中国の最先端AI開発を国家安全保障上のリスクと見なしている。
 そして、インテルの前最高経営責任者(CEO)、パット・ゲルシンガー氏は「輸出規制により利用可能な資源が限られていたため、中国のエンジニアは創造性を発揮する必要があった。そして、彼らはそれを成し遂げた」とし、「エンジニアリングの本質は制約だ」と語った。

 米先端半導体輸出規制の有効性に疑念、DeepSeekのAI開発成功で

(3)AIアプリの正答率17%、米欧競合を下回る...

 情報の信頼性評価を手がける米国のニュースガーによると、29日にDeepSeekの人工知能(AI)アプリは、ニュースや情報に関する正答率が僅か17%と、米オープンAIの「チャットGPT」やグーグルの「ジェミニ」など米欧競合との比較では11アプリ中10位だった、とのレポートが公表されました。

  具体的には、他の生成AIの回答精度を測るのに使ってきた300の質問を活用。結果は30%が誤りで、53%があいまいもしくは役に立たないもの。「失敗率」は83%と、欧米競合アプリの平均(62%)より高かった、とありますが...。

「安価で高性能」にほころび アプリの正答率17%―中国ディープシーク 

DeepSeekアプリは、中国政府のオウム鳥

 DeepSeekアプリは、問いかけに対する約3割の回答で、中国に関する質問をされていない場合でも中国政府の見解を繰り返し、中国が直接関係しないアゼルバイジャン航空機の墜落事故に関しても、中国の立場を回答しています。
 ただ、専門家の中には、「同アプリは、同等のAIモデルの30分の1のコストで、あらゆる質問に答えられる点で画期的だ」と、述べる者もいます。

殻を破ったDeepSeek。次はどの国、どの企業が名乗りを上げるのか...

 このように、話題が沸き上がるAIアプリ「DeepSeek」ですが、米国の執拗な対中チップ(半導体)禁輸がDeepSeekを誕生させたとも言われています。このような費用を掛け過ぎないAIアプリモデルは、各国に点在する天才プログラマー群から今後とも発表されていくことでしょう。最後に、中国のブログ界においては、次のような記事がワンサカ網羅されています。紹介して終わります...。
  • 「利用者はますます増え、それに比例して多く人たちの個人情報が(中国共産党に)提供され、結果的に全ての行動を報告することになる」と指摘。「中国はそれを行動変容活動や偽情報拡散に利用し、西側の利用者たちにターゲットを絞ったメッセージを送るだろう」。(*毅然として、米国版は人畜無害とは必ずしも言い切れない?...)
  • 米国の対中国半導体規制は、「最終的には米国に裏目に出る」。
  • DeepSeekが米国株バブルを一挙に崩壊させた。これは1992年にジョージ・ソロスが英ポンドを売り浴びせたときよりも重大な打撃だ。
  • DeepSeekの画期的な進歩により、アメリカのトランプ大統領が就任直後に発表した1000億ドル規模のAI構想「スターゲート計画」が「宇宙空間の墓場」と化した。

コメント

このブログで閲覧の多いページBEST10(過去30日間)...